遠い記憶の中。
今も強く残っている記憶。
あまりにも眩しくて、あまりにも残酷で。
それは一瞬ですべてを消し去って。
家族をバラバラにして。
当り前の生活を当たり前でなくした。
誰かに助けを求めても、誰も振り向いてはくれなくて。
皆自分が生きるだけで必死で。
声も出ず
ただただ人間が消されていくのを見ることしかできない。
でも、それでも
泣いていては駄目だと
自分を奮い立たせて
当てもない廃墟の中を歩き続けていて
だけど、何もない事はわかっていた。
このまま一人死ぬまで歩き続けるのだろうかと
不安で自分自身が潰されそうになって
だけどどうしようもなかった。
だから
だから
助けてほしいと願いながら誰にも届かない手をのばして
必死でもがいて
苦しくて
それでも諦めず
いつか届くと信じて
歩き続けた。
最初は何も見えなかったけど
次第に光が見え始めて
手を伸ばすと
握り返してくれた人がいた
そこから自分を引っ張り上げてくれた。
暖かな眩しい光の中で
その人は笑って自分を受け入れてくれた
それを忘れないために
僕は・・・
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5年前。
史上最悪の第二次世界恐慌に陥ったことで、彼方此方で暴動が勃発。
領土問題により紛争が起こり、米国の加勢として日本も戦争に参加せざるをえなくなった。
特に東南アジア付近で核兵器導入による殲滅戦は類を見ないほどに悲惨な状況となる。
日本は自衛隊を各国に派遣するも敗退。米国に支援物資の要請をしたが、米国はこれを拒絶。日本は見捨てられたという形になった。
もともと資源が乏しい日本では武器等の製造は困難を極め、防戦一方になりつつあった日本にさらに追い討ちをかけるように、独逸で開発されたAIを用いた人間型殺戮兵器A‐DGが派遣され、日本は壊滅状態となる。
政府は機能を停止。殺戮が続く中、生きるために人民が結成したのが「人民自衛協会」、その後に続いて「青少年自衛兵」等が結成され、日本は僅かながらも抵抗をし続けていた。
後に、この世界を巻き込んだ大規模な戦乱は「第三次世界大戦」と名付けられる。
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戦争が始まる前、母親がまだ生きていたころによく絵本を読んでもらった記憶がある。
冬になってクリスマスが近づくと、サンタクロースが主人公で世界中の子供たちに様々なプレゼントを配っていくというような内容の絵本をひっぱり出してきて、母親に読むようにと強請ったものだった。
朝起きると枕元にプレゼントがあって、箱を開けるとロボットとかの玩具が入っているというのに憧れて、何回も何回もその絵本をめくった。
だがしかし、結局夢は叶わぬまま・・・・・
「くそっ・・・」
少年はベッドの上に、不貞腐れながら飛び乗った。そのまま仰向けに寝転がり、天井についている蛍光灯がまぶしいというように額に腕をあてる。
孤児院の子どもたちが次から次へと寝室に入ってきて、自分のベッドに入った。後から来た孤児院の院長が全員入ったのを確認すると電気を消し、優しく「おやすみ」と言って部屋を出て行った。
寝室は10~15畳ぐらいで、ガランとしており、病室なんかに置かれているようなベッドがあるだけだ。子供らしいものなんて何もない。
一つしかない窓から月明かりがさしている。
少年は暗くなった部屋の天井を見つめながら何度か瞬きをした。
(あと3時間でクリスマスか・・・・)
ベッドの横に置かれているデジタル時計を横目で見て、再び天井に目を移す。
今日はクリスマスイヴだった。
といっても何もなく、いつも通りに過ごしただけでケーキもツリーも何もなかったし特に楽しいことがあった訳じゃない。
いつも通り
ただ隠れていただけ。
敵国の兵器に見つからないように息を殺し、外出もせず、室内で戦争が終わることを祈るしかなかった。
ここ数年外の空気を吸っていない。
「・・・・・寝れん・・・」
目を閉じた少年だったが、すぐに閉じた瞼は開かれてしまった。どうしても眠れない。別に期待しているものもないのに、何だか何かが起こりそうで寝ようとしても気になって仕方なかった。
しょうがないので横に置いてあるデジタル時計を見つめることにした。
一分一秒と積み重なっていく数字。
手助けをするように、少年は時計と一緒になって数え始めた。
1、2、3、4、5、・・・・・・
こうしていれば羊を数えるのと同じ原理で眠れるかもしれない。
44、45、46、47、48、49、・・・・・
後10秒で15分になる。
56、57、58、59、・・・・・
15分になろうとしたちょうどそのとき
「!?」
ドアが静かにキィッと開く音がした。聞き間違いではない。
そのまま人が入ってくる気配。
少年はできるだけ寝ているふりをした。もしかしたら、最悪の場合敵の兵士かもしれない。それかいい方向に考えて、院長かそのほかの係りの人か誰か。
しかし懐中電灯もつけず、こんなに慎重に入ってくるなんて不自然であった。足音ひとつ立てず、かすかながら服がこすれる音がするだけ。
心臓が早鐘のようにドクドク鳴った。
もし、最悪の場合のほうだとしたら・・・・・・
ばれない様にうっすらと目を開けてわずかに頭をあげた。暗闇に浮かぶ人影。
やっぱり誰かいる・・・。
それにしても背格好からいったらこの院にいる誰とも似つかない。女性でないことは確かだった。
ということはやはり
そう思うと恐怖で体が全く動かせなくなった。頭を下げようとしたがびくともしない。
そのままその人影を見つめ続けるしかなかった。
人影はそんな少年に気づいていないようだ。ドアの一番近くで寝息を立てている子供に近づくと、ポケットらしき所から何かを取り出した。
月明かりに光って反射している。金属だ。よく見えないが、三角形のバレットのような・・・。
それを子供の額に近づけた。
少年は目を見開くしかなかった。叫ぶことも動くこともできずに・・・・
バシンッ!
小さく電気がはじけたような音がして、金属板から何か電流のようなものが子供の額に吸い寄せられていった。
人影はそれを確認すると、今度は向かい側の子供に近づき、また同じように額に近づけ電流を流す。
少年はどうしようもなくただただ近づいてくるその音を聞いているしかなかった。
何をしようというんだ・・・・
まさか殺しているのか・・・・?
しかし耳を澄ませると、電流を受けた子供からは再び寝息が聞こえた。生きている。
ということは、何か実験でもしているのか・・・・?
ついに少年の向かい側の子が終わり、今度は少年の番になった。
薄く開けた目はしっかりと人影をとらえていた。
女性ではない。たしかに男だ。ゆっくりと額に金属板を近づけてくる。
少年は目をギュッと瞑ったが、我慢ならなかった。
人影の手をガシッとつかみ引き離す。そして勢いよく起き上がって叫ぼうとした瞬間
「ちっ」
と舌打ちした音が聞こえたかと思うと、手が伸びてきて少年の口を塞いだ。
そのままじたばたする少年を抱え部屋を出る。音をたてないように走り、そのまま外に出た。
出た瞬間とてつもなく冷たい空気が肌を刺す。
その人物は口を塞いだまま雪が降り積もった地面に少年を降ろし、まだじたばたする少年に向かって、自分の唇に人差し指を当て「静かにしろ」というジェスチャーをしたが、少年はそれでも反抗的な目でもがき続けている。
ふーっと溜息をつき、困ったように眉間にしわを寄せた。何か少年がわかるような自分の証明につながるものを探し、見つけた。
「これを見ろ。いいから・・・・ほら。僕は敵兵じゃない。見ろってば。ほら」
少年に突きつけたのは、その人物が着ているウィンドブレーカーの肩についているワッペンだった。
ワッペンには丸が三つ重なったような印と、その下に「青少年自衛兵」という文字が刺繍されている。
それを見せたとたん少年は少し大人しくなった。
「君ぐらいの歳でも分かるだろ。僕は味方兵だよ。君の味方だ」
「み・・・・か、た」
少年は理解したようだった。寒さのせいか声が震えている。
「そう、僕は味方だ。だから安心していい」
そう言うと、少年を抑えていた手を離した。そのまま自分が乗ってきたらしいバイクまで歩いて行き、何かをひっぱり出してきた。
「これ。ゴメンな、寒いだろ。サイズ大きいかもしれないけど、ウィンドブレーカーと防寒靴」
渡されたものを受け取り、少年はその人物をやっと正面から見た。髪は金髪のような銀髪のような色で、肩につくかつかないぐらい。背はそれほど高くない。歳は16,17といったところだろうか。言葉でうまく表現できないが、透き通った感じのする眼だった。
少年はその眼に何故か少し恐怖を抱いた。
「僕の名前は早志 寮(はやし つかさ)。第8部隊に所属している。シリアルナンバーは八-二〇二四四五。君は?」
「・・・・・尚一。東堂 尚一(とうどう しょういち)」
突然始まった自己紹介に少々戸惑った尚一だが、寮は全く気にしていないようだ。しかし、何か驚いたような顔をしていた。
「・・・・・・・東堂・・・・か」
そう呟くとじっと尚一の目をのぞきこむ。その眼に耐え切れなくなって尚一は顔をそらした。
「なんだよ」
寮はハッとしたように目を見開き、困ったような笑顔を見せた。
「ゴメン、何でもない。多分偶然だ・・・きっと」
「?」
意味ありげな言葉を言う寮に、尚一は不審な目を向けたが、寮はさっきとは違う笑顔を見せた。
「やっぱそれサイズでかかったな。でもそのウィンドブレーカー、青年兵にでもなれなきゃあ着れないんだぜ。いい経験になったな」
「・・・嬉しくねェ」
尚一がそういうと、寮はもっともだと笑った。そして首にぶら下げてあったゴーグルを額まで上げる。そのあと、腕時計を見て時間を気にする素振りを見せた。
「さてと、僕はそろそろ行かなきゃならない。君はどうする?」
そう聞かれて、尚一は何か言い返そうとしたが、何も思い浮かばなかった。でも引き留めておきたかった。そして・・・・
「僕が何をしていたか、気になりはしなかったかい?」
「!?」
寮は今度は短く、ふっと笑った。尚一は何も言い出せない。聞いてみたいのに聞いてはいけないような気がしていたからだ。
「本当はさ、知られちゃいけなかったんだ。特に君のような子供には・・・ね」
「ど、どういう意味だよ。俺たちに・・・何したって言うんだよ・・・」
そのまま答えてくれると思ったが、違った。寮はしばらく考えたあと、バイクに跨った。そして尚一の方へ振り返る。
「とにかく乗って。これも何かの縁だ。縁を大切にしろってな、僕の尊敬する人が言ってたんだ。さあ、ほら早く」
「え・・・でも・・・」
「いいから、ほら」
ぐいっと引っ張られて、強引に二台に座らされる。尚一が座ったとたん、バイクはいきなり急発進した。
「うわっ・・・うおおおおおおおお」
冷たい風が露出している顔面をたたきつける。思わず顔を寮の背中に埋めた。
「しっかりつかまってろよ!」
エンジンを吹かし、猛スピードで廃ビルの群れを突き抜けていく。路面は凍ってて滑りやすくなっているが、軍事用バイクということだけあって、タイヤには問題ないらしい。急激な右折左折にも難なくバイクはついてきた。
「ど、どどどこに向かってるんだよおおお!!」
いくら兵士用ウィンドブレーカーを着ていたって寒いし顔や手が凍りそうだった。叫ばないと、一生声が出ないような気がした。
「もうちょっと静かにしてくれないか!?」
「うごっ・・・おあああああああ」
無理な注文だった。
バイクは大通に出て、エンジン音を響き渡らせながら進んでいく。
「では、さっきの続きといこう」
「?」
しがみ付くことに集中していた尚一は、寮の言葉が上手く聞き取れていなかった。
「なぜ僕があんなことをしていたのかってことを」
「・・・・」
ああ、そのことか。今全然頭の片隅にもなかった。
「僕たち青年兵は、二年ほど前からイヴの夜になるとこうした活動をしていた。小さい頃に、よく絵本読んでもらっただろ?サンタクロースとか、クリスマスの絵本」
尚一は頷いた。
「サンタはイヴの夜、世界中の子供たちに何を配るか知ってるか?」
もちろん尚一は知っている。
「・・・・プレゼント」
「そう、プレゼント。子供たちにサンタはプレゼントを配る。夢や希望がいっぱい詰まったプレゼントを。そうして子供たちは幸せな気分でプレゼントを開けるんだ」
そう語る寮が何を言いたいのかが解らず、尚一は苛立ってきた。
「そんなのおとぎ話だ・・・」
「確かにな。それは絵本の中の話だ。馬鹿馬鹿しいって思ってるやつもたくさんいる。大人は絶対に信じてない」
「俺も信じてない・・・・」
子供と思われるのが嫌で、ついついそういうことを言ってしまう。もうそんなものは信じていないとばかりに、尚一は顔を下に向けて不貞腐れていた。
どうせ信じていたって、そんなもの夢に終わるのは分かっている。
それを嫌というほど、今の世界に教わって来たのだ。
「君みたいな子供はいっぱいいる」
寮はちらっと尚一を見て、少し寂しそうな顔でそういった。その言葉で尚一は顔を上げて、寮の顔を見る。
「戦争が始まってから、そういう子がたくさん増えた。何も君だけじゃないんだ。夢はしょせん夢なんだって、ね」
「・・・・」
申し訳ないようなよくわからない感情にとらわれて、尚一は再び顔を下に向けた。
「そうして、現実をたたきつけられて、夢を壊されて、目に映るもの全てを疑って・・・・・・そんな中で幸せも見つけられないまま育つ子供たちを、何とか助けてやりたいって思った人がいたんだ」
寮は遠い昔を思い出すように、目を細めて淡々と語りだす。
「夢を失くした子供たちに、夢を与えてやりたいって言った人がいるんだ。それが僕たち青年兵第8部隊の元リーダーだった人。僕を救ってくれた人であり、僕の尊敬している偉大な人」
バイクは緩やかに右折した。
「その人を中心として、青年兵全体でその活動は行われることになった。しかし、プレゼントを買うための費用も、プレゼントにするものも、戦争をしている今となっては無理な話だった。だから、代わりに何か幸せになれるものをプレゼントしようということになったんだ。たとえ一瞬でもいい。一時の幸せでもいいから子供たちに夢を与えたい。・・・・・・だから」
強風が寮と尚一の脇を通り過ぎていく。
「文字通り、“夢”を与えることになった」
「・・・・え・・・?」
予想外の答えに尚一はよく理解できなかった。夢というのは眠ったときに見る“夢”のことなのだろうか?
「さっき僕が持っていたあの三角形の機械。君、見ただろ?あれから発せられる電気信号が脳の“記憶”が収納されているところを刺激して、昔の幸せだと感じたことをそのまま夢として呼び起こしているんだ」
尚一は孤児院で見た光景を思い出した。あの電流は、そういうことだったのか。
「昔の記憶だけじゃなくても、例えば、本人が望むことを夢として体感することもある。それは人それぞれだ。強く思っていることが夢に反映される」
「へぇーっ、そりゃあ凄ェ!」
元気が出てきた尚一を見て寮は微笑んだ。
「夢の中なら何だってできる。たとえ世界が戦争をしていても、夢の中なら関係無い。たとえ死んでいる人にだって、夢の中なら会うことができる・・・」
「あっ・・・・・」
寮の悲しそうな顔に、思わず尚一は何か言おうと思って口を開いたが何も出てこず、開いた口は再び閉められた。
バイクは突き当たりを左に曲がり、一つの施設にたどりついていた。外観からいって孤児院に違いないと尚一は思った。
「ここで最後。俺の仕事はこれで終わりだ」
そう言って、寮はバイクから降り、入口に歩いて行く。尚一もそれに続いた。
ギィッと錆びた音がして、重い鉄板の扉が開く。どうやったのかは知らないが、合鍵というのを持っているらしい。
「ここの院の寝室は全部で12部屋ある。その内使われているのは9部屋だけ」
暗い廊下を歩いて行き、軋む階段を上がって右に曲がる。ドアがズラッと12戸並んでいた。順番に手前の戸から回っていく。
戸を静かに開けて、子供達が眠っているのを確認してから中に入る。そして寮はズボンの横に付いたポケットから例の機械を取り出し、一番近くで眠っている子供の額にそれを近づけた。
「見ててごらん」
尚一の方を振り返り、そう言うと、親指で機械の横に付いている小さな突起に触れた。
すると暖かい青い光が小さくパシンッと迸り、額に吸い込まれていく。尚一にはその光は気持ちのせいか、さっき見たものとは違ったものに見えた。
再び寮が親指で突起に触れると、光は止まり、寮は挙げていた腕を下ろした。
「・・・・あっ」
尚一は驚いてその子の顔を覗き込んだ。光を当てられた子供の表情が次第に和らいで、微かに笑顔になっていった。
「これが幸せのプレゼントだよ」
寮は微笑んで尚一の頭をポンポンと叩いた。
そのあと、一通り部屋の中全員にやった後、また次の部屋とやっていき、30分後には全部屋終わっていた。
何だか冬で寒いはずなのに、施設を出た後の尚一の心はとても暖かいものになっていて、足取りもどこか弾んでいるのだった。
「嬉しそうだね」
そう笑って言う寮に向かって尚一も笑顔で答える。
「そりゃあまあなっ!いいことした気分だ!」
「いいことしたのは僕だろ?」
二人の笑い声は冬の高い星空に吸い込まれていった。
デジタル時計は11時半を表示していた。バイクを走らせながら、寮と尚一は廃れたビル群を横目に無言で風を受けていた。
あと30分でクリスマスとなる。どこか心の中でカウントダウンを始めていた。明日という日に特に特別なことは無かった。いつも通りなだけなはずなのに、なんだか今は違っていた。
「あのさっ・・・」
「んー?」
沈黙を破ったのは尚一だった。何気なく寮もそれに答える。
「最初にホントは知られちゃいけないって言ったのに、何で俺にここまで教えてくれたんだ?」
最初から思っていたことだった。知られてはいけない事なら、尚一を連れていく必要なんて無かったのだ。なのに何故、ここまで教えてくれたのだろう?
寮はしばらく何も答えなかった。ずっと前を見つめて口も開かなかった。
答えたくなかったのだろうか?
「・・・・・・・・・理由なんて、ありはしないさ・・・・」
「えっ・・・・?」
寮はまた遠くを見つめていた。何と言おうか迷っているようだった。
「僕は、君の中に・・・・」
「俺の中に?」
「見たから・・・」
「見たあ?」
「あの人が・・・・・君に・・・」
寮が何を言いたいのか、尚一には分からない。途切れ途切れの言葉の意味も知りはしない。
今は寮がとても辛そうに見えた。
「よく分かんないけど・・・・あのさ、俺、兄ちゃんいたんだ」
「え・・・・?」
その場の空気を変えるために尚一は話題を変えようとした。
「俺の兄ちゃんも寮みたいに、青年兵だったんだ。でも1年前に死んじゃった・・・・」
本当は言いたくなかった。これは自分の中でも相当ショックな出来事だったのだ。父親が戦争で死に、母親も戦火で焼け死んだ。最後に残った、たった一人の自分の家族。それが兄だった。
そして兄も、青年兵として、国を守るために、自分たちのために死んだのだ。
「兄ちゃんはさ、弟の俺が言うのも何だけど、かっこよかったんだ。いっつも俺を守ってくれた。優しくて、強くて・・・・ホントに自慢の兄ちゃんだったんだ・・・・」
今でもよく覚えている笑顔。まだ青年兵ではなかった頃の兄とよく遊んだ。
「兄ちゃんさ、よく言ってたんだ。夢を諦めちゃいけないって。諦めたらそこで終わりになって一生叶わなくなっちゃうって」
「うん・・・」
寮もまるで聞いたことのあるようにうなずいた。
「俺、そのこと忘れてたけど、寮のおかげで思い出せた」
「うん・・・」
また寮はうなずいた。
「だから、ありがと」
尚一は恥ずかしそうに、でも嬉しそうにでも嬉しそうに笑って言った。久しぶりに心の底から笑えた気がした。
「うん・・・・・うん」
そう二度うなずいた寮が鼻声になっているのを尚一は気づかず、寮の目元が濡れて月明かりに照らされて光っていることも、バイクの後ろに座っている尚一は知らなかった。
程無くして、バイクは尚一のいた古びた孤児院についていた。
「うぅ・・・寒かったあ・・・」
「はは、僕も」
あたりにはバイクのエンジン音微かに響いている。
「あ、そうだ。これ返さなきゃ」
そう言って尚一はウインドブレーカーと防寒靴を渡した。
「もらっといてもいいんだぞ」
「俺みたいなガキが、そんな軍用のもの持ってたらおかしいだろっ」
つれないなあー、と文句を言う寮に当たり前だと尚一はつっこむ。
ウィンドブレーカーと防寒靴を脱ぎ、寝巻きの格好だったので寒くてしょうがない。
尚一は体を震わせながら寮を見上げた。
寮は微笑む。
「さっ、そろそろお別れの時間だな」
その言葉を聞いて尚一はなんだか寂しくなった。
「また、会えっかな・・・?」
思わずそんな言葉が飛び出す。
難しいな、と寮は笑って言った。
「僕は今年で第8部隊を去るんだ。来年はここの地区の担当じゃなくなる。だからもう会えないかもね」
「そっか・・・」
何とも言えない気持ちになって尚一は少し俯いた。今日初めて会ったのに、なんでこんな気持ちになるのか分からなかった。
「青年兵にでもなればそんなことはないけど・・・・僕は君まで失いたくない」
「俺まで・・・?」
そしてまた寮はハッとする。
「あ、ゴメン。今のは気にしないで・・・・・・じゃあ、ね。もう行ったほうがいい。寒いし、敵兵もどこかにいるかもしれないから・・・」
「うん・・・」
尚一は孤児院の扉の前まで歩いて行き、そこでまた寮のほうに向き直った。寮の目をしっかり見据えて深呼吸した後、大きく息を吸い込んだ。
「今日は楽しかったぜ!!ありがと!!寮兄ちゃん!!」
そういうといそいで走って中に入って行った。
雪が静かに降る中で、ずっとしまった後の扉を見つめ続ける。そして息を吐き、ほほ笑んだ。
「あいつ、最後までさよなら言わなかったな・・・・ホントあの人にそっくりだ」
月明かりに白く輝く髪をなびかせながら、寮は月を見上げた。
「尚平さん、あなたの弟さん元気でやってるみたいですよ。だから安心してください。あの子になにかあったら僕が必ず守ります。あなたの意志を引き継いで、僕はあの子を支えていきます。あなたは天国で見守りください」
目を瞑って耳を澄ますと、どこからか鈴の音が聞こえる気がして寮はまた笑った。
「メリークリスマス」
そう小さくつぶやくと、寮はバイクにまたがり、廃ビルの中をバイクで走って行った。
END
≪あとがき≫
クリスマスからどんだけ過ぎてんだよ!!ってつっこみは無しの方向で(←
これ去年のクリスマス前に思いついた話なんですけど・・・ずっとUPしようと思って忘れてたものです(汗
長くなりすぎてはいけないと思い戦闘シーンやそのほかのもの色々カットした結果、こんな内容が薄っぺらいものが出来てしまいましたOTL
よしっ、夢のある物語を書こうと意気込みはや数か月。こんな変な物語が出来上がるとは思っていなかった俺(←
感動を狙ったのに感動できないところがまたいいですね(←
ようするに失敗作品じゃねえかああああああああ!!!!!
まあ、文才ないの分かってますけども。分かってますとも!!!!(←
いつか感動できるものをちゃんと書いてみたいです。本読んで学ぶしかないですね、その辺。
俺本読まないからな(←
それと、世界的不況なんかで戦争起きませんからね。不可能だろ!!金無いのに!!
市民暴動ぐらいはあると思いますけど、戦争はないだろ!!
では、えーと、これくらいにします。
それではー。